異物の分析

当センターへの技術相談でもっとも多いのが、汚れや異物についてのもので、成形品の表面に付着した汚れが何なのか、製品に混入した破片が何なのか、といった相談です。今回はこうした異物を分析する手法と機器の利用方法について、ご紹介します。

用語

有機物
プラスチック、木、油脂、食品など、主に燃える物質
無機物
金属、セラミックなど、主に燃えない物質
異物
製品に着いたゴミや汚れ、混入してしまった物質など
定性分析
元素や分子の種類の違いを判別すること
定量分析
決まった物質について、その量を測定すること

分析の手順

1. 外観

目視でおおまかな材質(木、プラスチック、金属、セラミックなど)が予想される場合

  • 木、プラスチックなどの有機物 → 赤外分光分析(IR)
  • 金属、セラミックなどの無機物 → 蛍光X線分析

2. 材質が分かりにくい小さな異物の場合

ポイントは、とにかく「顕微鏡で観察する」ことです。

目 視ではよく分からない場合には、拡大して、ピンセットで分離したり、針で押して硬さを調べたり、ナイフで切って断面を見たりすることで、材質が予想できる ケースがよくあります。簡易な両眼の顕微鏡であれば、2万円ほどで十分使えるものが購入できるので、品質管理部門に一台は必需品です。

材質の予想がついたら、最後に分析機器で確認します。異物だけを取り出して分析するのがベストですが、異物が50μm未満の小さなサンプルの場合には、製品ごと10mm程度に切断して、電子顕微鏡で分析します。

異物サイズ:50μm以上 → 有機物か無機物か分からない → 顕微鏡のついた赤外分光分析装置(IR)で測定 → 有機物で無ければ、電子顕微鏡(SEM)の元素分析装置で測定。

異物サイズ:50μm未満 → 有機物は測定困難 → 電子顕微鏡で元素分析は可能

分析結果

1. 有機物

赤外分光分析(IR)の結果で得られる赤外吸収スペクトルを、指紋を照合するようにして物質を特定します(図1)。ただし、汚れの付着により他の物質が混入しているような場合には照合が難しくなりますが、吸収される波長から分子構造が推測できる場合もあります。

赤外分光分析の結果グラフ

図1 赤外分光分析の結果

2. 無機物

蛍光X線分析や電子顕微鏡で定性・定量分析を行うことで、物質を構成する元素のおおよその割合がわかりますので、そこから物質の種類を特定します(図2)。

蛍光X線分析の結果グラフ

図2 蛍光X線分析の結果

おわりに

これ以外にも、異物の分析には色々なテクニックがありますので、お気軽に工業技術センターへご相談下さい。(機能材料担当 TEL 077-558-1500)