滋賀県工業技術総合センター 令和6年度(2024年度)業務報告
2. 技術相談支援
令和6年度実績の概要は、次のとおりです。
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事業名 |
実施件数等 |
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|---|---|---|---|
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栗東 |
信楽 |
合計 |
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職員による技術相談 |
4,483件 |
1,151件 |
5,634件 |
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リサーチサポート制度の利用 |
3件 |
2件 |
5件 |
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モノづくり技術人材育成事業 |
18コース |
2コース |
20コース |
(1) リサーチサポート制度の利用
県内企業や当センター等の実施する技術開発や研究会事業に大学等の専門家をリサーチサポーターとして招聘し、適切な指導助言を得て課題解決を図ることで技術開発や研究会事業等を円滑にすすめる事業です。
[栗東]件数:3件
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月日 |
分野 |
内容 |
|---|---|---|
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R6.10.4 |
機械加工 |
加工機械の使用方法や安全対策について |
| R7.3.10 | 機械加工 | 機械加工における安全対策の講習について |
| R7.3.12 | 機械加工 | 機械加工実習について |
[信楽]件数:2件
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月日 |
分野 |
内容 |
|---|---|---|
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R6.5.13 |
デザイン |
万博関連事業に係る製品開発支援について |
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R6.12.9 |
デザイン | 万博関連事業に係る製品開発支援について |
(2) モノづくり技術力向上のための「技術研修」事業(講習・実習)
件数:20コース、参加者:183名
| 庁舎 |
講習会名称 |
年月日 |
内容 |
参加者 |
|---|---|---|---|---|
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栗東 |
講習【ラマン分光法による材料分析の基礎】 実習【ラマン分光分析装置】 |
R6.9.11 |
ラマン分光分析装置による材料分析技術に関する講習と実習 |
10名 |
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講習【2次元検出器を活用したX線残留応力測定装置の原理と活用事例】 |
R6.10.11 |
X線を用いた残留応力の測定技術に関する講習と実習 |
6名 |
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講習【3D CAD入門 −ゼロから始める、3D CADで広がるものづくりの世界−】 |
R6.11.12 |
3D CADを用いた3Dモデリングに関する講習と実習 |
7名 |
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講習【材料強度測定の基礎と応用】 |
R6.11.29 |
万能材料試験機を用いた材料強度測定に関する講習と実習 |
13名 |
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講習【3D CAM入門 −初心者歓迎!3D CAMでスムーズにデジタルものづくり−】 |
R6.12.3 |
3D CAMを用いたNCプログラム作成に関する講習と実習 |
4名 |
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講習【振動試験の目的に合わせた 試験内容選択のポイント】 |
R7.2.5 |
振動試験機による試験方法に関する講習と実習 |
14名 |
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講習【色彩測定の基礎】 |
R7.2.7 |
色彩測定技術に関する講習と実習 |
12名 |
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講習【EMI測定技術講習会】 実習【3m法電波暗室、エミッション(EMI)測定システム】 |
R7.2.14 |
EMI測定およびその規格(CISPR32)に関する講習と実習 |
11名 |
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講習【熱分析の製品開発・評価への活用】 実習【熱分析装置】 |
R7.3.11 | TG-DTAを中心とした熱分析の活用方法に関する講習と実習 | 14名 7名 |
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栗東小計 |
18コース |
163名 |
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信楽 |
講習【粒子径分布測定の測定原理と解析方法】 |
R6.11.27 |
粉末の粒子径分布測定技術に関する講習と実習 |
11名 |
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信楽小計 |
2コース |
20名 |
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合計 |
20コース |
183名 |
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(3)技術移転
件数:33件
以下の条件を満たす技術相談支援を技術移転の件数としています。
- 技術相談や設備使用のため、新たな調査、試験、実験、試作のいずれかを行っていること。
- 企業の技術力向上に対する貢献度が、研究推進指針でいう研究成果の技術移転と同等と考えられること。
- 企業から「技術移転申請書(調査・試験)」(案)の提出があること。
(4)主な技術相談事例
鉄道信号部品に対する振動試験の方法
- 分野
- 電子
- 課題
- JIS E3014に基づいた鉄道信号部品の振動試験をおこないたい。
- 対応
- まず、JIS E 3014に記載の内容を理解するために加速度、振幅、周波数の関係、共振について、正弦波掃引振動試験に関する概要と注意点について説明しました。次に、JIS E 3014に記載の3種類の試験は共振点探査と耐久試験の2つの試験から成り立つことを解説し、どの試験を実施するか選択する必要があることを述べました。最後に、共振点探査の方法などを指導しました。
製品動作音の解析について
- 分野
- 電子
- 課題
- 製品から発生する異常音を低減させたい。
- 対応
- 対象となる音がどのような原因で発生しているかを知る必要があります。このためマイクロホンとUSBオーディオインターフェースでパソコンに音データを取り込み、周波数解析を行いました。また特定の周波数の音のみを抽出することにより、対象の音の発生原因を調査し、異常音低減につなげることができました。
表面粗さ測定における計測パラメータについて
- 分野
- 機械・計測
- 課題
- 表面粗さ測定機でRa、Rzを測定するが測定に必要なパラメータはどういったものがあるのか。
- 対応
- 表面粗さ測定では基準長さと呼ばれるパラメータを決めて測定を行う必要があります。Ra、Rzは測定機でサンプル表面をなぞって触針の上下の動きを測定したデータから直接の計算を行う訳ではなく傾きの補正の後に低域フィルタ、高域フィルタをかけた粗さ曲線を用います。この低域フィルタと高域フィルタの基準となるパラメータが基準長さになります。また基準長さは評価長さと呼ばれる測定長を決めるパラメータでもあり、評価長さは基準長さの5倍となります。この基準長さはRa、Rzの値によって変わりJIS B 0633で定められています。
金属3Dプリンタによる造形パスの作成方法について
- 分野
- 機械・計測
- 課題
- 造形パスの作成方法について。
- 対応
- センター既設の粉末DED方式金属3Dプリンタでは、目的の形状を造形するためにNCプリグラムの作成が必要不可欠です。複雑な形状の造形を行う場合であれば、CAMによるプログラム作成が必須となりますがが、単純な形状造形による条件出しを行う場合は、自作プログラムが有効なことが多くなります。ただ、単純形状とはいえ利用者毎に異なる動作が必要になります。基本的なコードの書き方を含め、造形に適した方法は技術相談にて対応を行い、利用者自身でプログラムを作成し運転を行えるようになりました。
接着剤の温度変化について
- 分野
- 有機材料
- 課題
- 接着剤の温度による変化を確認したい。
- 対応
- ある一定温度以上に加熱することで接着力が変化するよう設計した接着剤について内部構造を評価したいという相談を受けました。そこで、動的粘弾性測定装置(レオメータ)を用いた温度分散測定を行い、粘弾性の視点から接着剤構造の変化を評価しました。測定にあたっては、接着剤の硬さや接着力の関係から材料の滑りが生じていました。そこで、条件の検討やジグの表面にブラスト処理を行うなどの各種工夫を行うことで、正確な測定を実現しました。
塗膜表面の組成分布の評価について
- 分野
- 有機材料
- 課題
- 主成分が同一の塗料について、配合によって塗装のはがれやすさに違いがあることが分かった。塗膜の化学組成の分布に違いがないか評価して、製造条件検討の指標としたい。
- 対応
- 数 mm四方の化学組成分布が測定可能な顕微IRイメージングを用いて、塗装表面の反射スペクトルの測定・評価を行いました。測定条件、解析条件を検討したところ、化学組成が一定な塗装と不均一な塗装があることが判明しました。この知見を基に、塗膜の製造条件の改善や使用条件の検討を行うことで、ニーズに適合した商品提案につなげていくこととなりました。
金属材料中の炭素成分の分析
- 分野
- 無機材料
- 課題
- 金属材料の熱処理を行っているが熱処理後も炭素成分が一定量残ってしまう。炭素量を低減する熱処理条件を検討するために、炭素がどのような状態で残っているか調べたい。
- 対応
- 金属中の炭素の状態として金属炭化物、有機成分、有機成分の炭化物などが考えられます。まずは電子顕微鏡(SEM)を用いた観察・元素分析により炭素成分が金属中にどのように分布しているかを確認した後、ラマン測定による化合物の分析を行い残存する炭素の状態を調査しました。SEM観察・分析から、金属表面に炭素系の物質が付着していることがわかりました。この結果をもとにラマン測定を行ったところ金属炭化物は見られず、有機成分およびその炭化物が残っている可能性が高いことがわかりました。有機成分が炭化すると除去が難しくなるため、炭化しない条件で熱処理をする必要があります。これらを踏まえ有機成分の炭化が始まる温度を調査し、熱処理条件の検討を進めることとなりました。
ステンレス表面処理法の開発
- 分野
- 無機材料
- 課題
- ステンレス部材の耐食性向上を目的に表面処理による不動態皮膜形成を試みている。耐食性の優れた表面処理法を開発するため、現行処理での表面の状態を調べたい。
- 対応
- ステンレスの不動態皮膜は、表面の数nmの領域に薄く形成される酸化膜であることが知られています。ステンレスの耐食性には、酸化膜の組成や化学状態が大きく関与しているため、これらを調べることは表面処理法の開発で重要な知見となります。今回、材料表面の元素組成や化学状態を調べることができるX線光電子分光法(XPS)を用いて、不動態皮膜の評価を行いました。XPSの結果、表面処理を行ったステンレス表面にはクロム酸化物が主成分で含まれ、鉄酸化物も含まれていることが分かりました。ステンレスの耐食性にはクロム酸化物が重要な役割を持つため、クロム酸化物の割合がより大きくなる処理条件を検討することとなりました。XPSを用いて表面状態を調べることは不動態皮膜の技術開発だけでなく、表面が重要な役割を果たす材料開発の場面で課題解決への貢献が期待できます。
農産物の色調評価について
- 分野
- 食品
- 課題
- 品種間の果実の色味を比較したい
- 対応
- 果実の特定の品種が見た目で消費者に選ばれにくいとの課題があり、アピールしたいと相談がありました。そこで、分光測色計を用いて数品種の果実表面で色調を測定しました。L*a*b* 表色系で数値化し、特定の品種が他に比べ特徴的に明るい色味であることが評価できました。得られた結果を基に広報資料を作成し販売促進につなげました。
食品中の異物分析について
- 分野
- 食品
- 課題
- 食品中で見つかった異物が何か明らかにしたい。
- 対応
- 製造した食品中に直径0.1mm、長さ5cmほどの繊維状の異物が発生しました。光学顕微鏡で像を確認したところ毛球様の形状が確認でき、異物が毛髪であることが予想されました。あわせて、FT-IR(フーリエ変換赤外分光計)で吸収スペクトルを確認したところ、毛髪様のスペクトルを示しました。分析結果から混入の原因と考えられる工程の特定と製造環境の改善に活用されました。
既製品のサイズ変更について
- 分野
- 陶磁器デザイン
- 課題
- 自社の陶製置物のサイズを変更して製造したい
- 対応
- 過去に作っていた製品を約30%縮小するために、サイズを変更した型を複数個作成したいとの相談がありました。
はじめに、既製品を3Dスキャンし、3Dデータ化を行いました。型が複数個必要なため、CAD上で抜きを考慮し
原型となる型(ケース型)をデータ作成し、モデリングマシンにて切削加工しました。
その後、ケース型を用いて、陶製品を実際に作るための型(使用型)を石膏の流し込みで複数個作成しました。
3Dデータ技術の活用により、型作成の工程を半分以下に短縮することができました。
陶製品からのリサイクル原料調製
- 分野
- 陶磁器デザイン
- 課題
- 廃棄予定の陶磁器を粉砕しリサイクル原料として使用したい
- 対応
- 陶製品を作った際に、形やサイズ、色などが規定外であったモノを陶片にして、
リサイクル原料とする相談がありました。個人作家であるため、比較的に量も少なく
大型の機器では対応できないため、試験場保有のインペラー粉砕機でおおまかに粉砕し、
次に、フレットミルで更に粒度を細かくました。
その後、粒度分布測定を行い、一連の工程により、目的の粒度のリサイクル原料を8割程度
調製することができました。
機器の表面温度測定について
- 分野
- セラミック材料
- 課題
- ペルチェ素子を用いて加熱・冷却をおこなう機器表面の温度分布を把握したい。
- 対応
- 温度計測には様々な方法がありますが、微小な機器表面の温度分布を確認する方法として、今回はサーモグラフィを用いた計測を提案しました。サーモグラフィにより機器表面から放出される赤外線量を測定し、温度分布を画像化しました。精密に測定するためには測定対象表面の放射率の合わせ込み等が必要にはなるが、表面温度分布にどの程度のばらつきがあるかは十分に把握することができるようになりました。
吸放湿材料の特性評価について
- 分野
- セラミック材料
- 課題
- 吸放湿材料開発において予備特性評価したい。
- 対応
- JIS A 1470-1 建築材料の吸放湿性試験方法を参考に、相対湿度を一体に保つために水または炭酸カリウムなどの飽和溶液を入れたデシケーターなどの密閉容器に複数の試料片を入れ、温度を一定するために恒温槽内に静置し、重量の経時変化を測定することで、吸放湿特性の同時比較評価する方法を助言しました。
