商品写真撮影テクニック講座

 カタログやネットショップで使用する商品写真は、商品の魅力を消費者に伝えるためにはとても重要なポイントとなります。今回の技術解説では、商品写真を撮影するための基本的なテクニックと、必要な機材について解説します。
全体像
イメージ写真

1.商品写真の種類

全体像

 商品の全体像をしっかりと確認できる写真。正面や斜め前から撮影、必要に応じて上面や裏面など他の方向からの写真を加えます。背景は白を基本にし、必要に応じて切り抜き加工します。

イメージ写真

 商品の特徴や利用シーンがイメージできる写真。ボケや演出を利用して、雰囲気を伝える写真にします。

デジタルカメラのセンサーサイズ(出典Wikipedia)

2.用具の選択

 商品写真の撮影には、一眼レフカメラやミラーレス一眼等の高機能なデジタルカメラが、マニュアル撮影等の設定に柔軟に対応できるので理想的です。

■カメラ

 センサーがAPS-Cサイズのデジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラが、リーズナブルな価格でありながら必要十分な性能を備えており、おすすめと言えます。APS-C専用の安価なレンズが充実してきているのもメリットです。

■レンズ

 レンズはキット付属のズームレンズだけでなく、商品写真で自然な遠近感が演出できる明るい中望遠(35mm換算で70〜100mm程度)の単焦点レンズが一本あると表現の幅が広がります。カメラのセンサーがフルサイズの場合は70〜100mm、APS-Cサイズの場合では50〜70mm程度の開放F値が3以下の明るいレンズがおすすめです。また、接写が可能なマクロレンズであれば、商品ディテールの拡大撮影に威力を発揮します。

■三脚・レリーズ

 安定した撮影が可能となるようにしっかりとした重量のある三脚を選び、レリーズやリモコンを利用してシャッターを切ることで、手ブレやシャッターブレを抑えます。

■撮影台・背景

 専用の撮影台があれば便利ですですが、テーブルに背景紙を折り目がつかないように湾曲させてセットするだけでも撮影可能です。背景は白を基本に白い撮影物用に黒から白のグラデーションがあればOKです。

■照明器具

 ソフトボックスと呼ばれる面光源の撮影用ライトがあれば理想的ですが、障子紙などのディフューザーを挟めばデスクライトでも撮影可能です。大光量の電球形スパイラル蛍光灯を使用した照明器具が安価で明るくておすすめです。複数の照明器具や光源を使用する場合は、光の色(色温度)を必ず揃えるようにします。

■レフ板・標準グレー板

 白や銀の明るくするためのレフ板に加えて、影を濃くするための黒いレフ板を揃えます。18%標準グレー板があれば、露出やホワイトバランスの調整が正確に行えます。

硬い影(左)とやわらかい影(右)

3. 撮影ブースのセッティング

■照明(ライティング)

  • 窓や扉から入る外光は暗幕や遮光カーテンでしっかりと塞ぎ、安定した光環境で撮影します。
  • 不要な映り込みの原因となる部屋の照明器具は消灯します。
  • カメラの内蔵フラッシュは使用しません。
  • メインの照明は真上から下へ照らすのが基本です。光量が不足しているところは、レフ板やサブの照明で補います。
  • 照明と撮影物の間にはディフューザーを挟むことで、やわからい陰影が生まれます。
  • 撮影物の両サイドに黒いレフ版を置くことで、サイドの影が強調され、立体感が高まります。

■背景

  • ツヤのない真っ白な紙などを背景に湾曲してセットします。
  • 白い撮影物の場合は、黒から白のグラデーションを黒を上にして背景にセットします。

■演出

  • 木や石などの板上に撮影物を置いたり、草花や小物雑貨を背景に置くことで、ナチュラルなイメージや高級感、生活シーンなどの演出ができます。
  • 背景紙に風景写真などを利用すると、その場で撮影したかのような効果が得られます。

4.カメラのセッティング

■撮影画質

 撮影画質の設定は、最も高画質なRAWを選びます。

■露出の設定

 露出とは撮影時にカメラのイメージセンサーに入れる光の量のことで、以下の3つの要素でコントロールします。

  • レンズの絞り(F値)
  • シャッタースピード
  • ISO感度

商品写真の撮影では、一定の照明の下で撮影するため、マニュアルでの露出の設定が基本になります。また、商品写真のような動かないモノを撮影する場合、シャッタースピードは遅くても問題なく、絞りとISO感度を優先的に設定します。

ISO感度

ISO感度を高くすると画像にノイズが発生するため、最も低い値を固定で撮影します。

レンズの絞り

全体像の撮影では、F10以上に絞り込んで被写界深度を深くし、全体的にピントが合った写真を撮影します。イメージ写真の撮影では、F3以下にしぼりを開けて、ボケを生かした写真にすると効果的です。

シャッタースピード

標準グレー板をセッティングの完了した撮影ブースに設置し、画面フレームいっぱいに入れて、カメラの露出計がゼロ(最適値)になるようにシャッタースピードを調整します。

■ホワイトバランス

 露出の設定と同様に、ホワイトバランスもマニュアルで固定して撮影します。撮影ブースにセットした標準グレー板を撮影し、ホワイトバランス用の画像に指定することで、ホワイトバランスの正確な調整が可能です。

■ブレ対策

 カメラは三脚に固定して、レリーズやリモコンでシャッターを切るようにします。シャッターボタンを指で押すと、カメラが動いて写真がブレてしまうことがあるのを防ぐためです。さらに、高解像度のカメラの場合、ミラーやシャッターが物理的に動作するときの衝撃で写真がブレやすくなります。こんな時は、ミラーアップや電子先幕シャッターなどの機能を活用したり、三脚にウェイトを追加したりすることで、ブレを抑えるようにします。

5.現像と修正・ファイル保存

現像

 RAWで撮影した画像を、JPEGやPINGなどの一般的な画像ファイルへ書き出すことを現像と言います。明るさ、コントラスト、ホワイトバランスなどの調整はこの現像時に行うようにします。

明るさ・コントラスト

明るさとコントラストの調整は、トーンカーブで行います。ヒストグラムで白飛びや黒つぶれを確認しながら調整します。

ホワイトバランス

ホワイトバランスの調整は、画像内の白やグレーの無彩色の場所をクリックして調整すると簡単です。

修正

水平・歪み補正とトリミング

 被写体が傾いていたり歪みが気になる場合は、「自由変形」や「レンズ補正フィルター」等で修正し、トリミングします。微妙に傾いている写真はクオリティが低く感じられますので、必ず修正するようにします。

ゴミ取り

 ほこりやゴミが商品に付着しているような場合は除去します。「スポット修復ブラシツール」を使うとワンクリックで簡単に修正できます。

切り抜き

 写真の背景が不要な場合は、切り抜き処理を行います。切り抜きした写真があれば、合成や白背景への加工が簡単に行なえます。

ファイル保存

ファイル形式

 画像ファイルのタイプには、JPEG、PING、TIFF、BMP、PSDなどの種類がありますが、JPEGだけはファイルサイズが小さくなる代わりに画質が圧縮されて劣化するので、最終的に使用するファイルを書き出すときだけに使用するようにします。修正が完了した画像は、必ずPINGやPSDなどの無劣化ファイルで保存用のファイルとして保存するようにします。

シャープネス・画像サイズ(解像度)の調整と書き出し

 画像を用途に応じた解像度に縮小、「アンシャープマスク」でシャープネスの調整後、JPEG等へ書き出して使用ファイルとします。

360°写真の撮影と活用

セッティング

 自動で回転するターンテーブルがあると便利です。一定の角度回転して数秒間停止してを自動で繰り返してくれるので、シャッターを数秒ごとに切るだけで360°画像の撮影が可能です。

活用

 js-cloudimage-360-viewというJavaScriptを利用すると、マウスでグリグリと回転できる画像をWebページ内に表示出来ます。