硬さ試験には多くの試験方法があり、また測定物にも金属、プラスチック、ゴムと多くの種類があります。ほとんどの試験では硬い圧子と試験物間の相互 作用の量から硬さを算出しますが、金属のような塑性変形する材料の硬さと、ゴムのような弾性材料の硬さとでは、試験方法も硬さの算出方法も違うため、単純 な比較はできません。各硬さ試験には硬さ記号が設定されており、異なる硬さ記号間での比較はできません。つまり、それぞれの測定物の特性と目的に適した試 験方法の選択が大事になります(表1 硬さ試験方法の一覧)。
今回は、当センターで利用可能な硬さ試験装置について、その測定物と用途について解説します。
主 に熱処理を施した鉄鋼材料の硬さ測定に利用されます。測定が簡便で測定者による誤差要因が少ないのが特徴です。硬さの記号はHRで表されますが、その後に 測定のスケール(圧子の種類と試験荷重)を示します。例えば円錐圧子を用いて150 kgfの試験荷重で測定を行った場合はCスケールとなるのでHRCと表記します。また、プラスチックの硬さ測定にも利用可能で、その場合は圧子として鋼球 を用います。その場合の代表的なスケールはM、Lスケール(HRM、HRL)です。また、Cスケールに関しては試験所認定を取得していますので、依頼試験 により精度の高い試験が可能です。
ビッ カース硬さとヌープ硬さは同一の試験機を用いて、それぞれの圧子を変更して測定を行います。ヌープ圧子は薄膜など薄い材料に使用します。一般に試験荷重が 1 kg以下の測定ではマイクロビッカースまたは微小硬さ試験と呼称し、当センターでは試験荷重が0.05 gf~2 kgfの範囲はマイクロビッカース硬さ試験機で、1~50 kgfの範囲はビッカース硬さ試験機で行います。
ビッカースの圧痕は肉眼では見えないほど小さく、小さな試料での測定が可能です。また、焼き入れの深さや製品内での硬さの分布測定の他に、セラミックス材料の硬さおよび脆性評価、および一部のプラスチックにも使用されます。
鋼 球または超硬球を圧子に用いて荷重を負荷し、その圧痕の大きさから硬さを求めます。圧子のサイズと荷重によりますが、圧痕は大きなものになるのが一般的で す。大きな範囲を測定することができるので、鋳鉄などの金属組織が一様ではない場合に適しています。試験荷重は500~3000 kgfで、主に金属材料に使用されます。
鋼球を一定 の高さから試験片に落下させ、その跳ね返りの高さから硬さを求めます。目測で読み取るC型、ダイヤルゲージで読み取るD型がありますが、当センターで利用 できるのはD型になります。デュロメーター硬さ試験機から求めた硬さをショア硬さと呼ぶことがあるので、混同に気を付ける必要があります。
針 状の圧子に荷重を負荷して、圧子の押し込み深さから硬さを求めます。試験の対象は主にゴムやプラスチック材料です。デュロメーターは圧子と荷重によってタ イプA、タイプD、タイプEがあり、硬さによって使い分けられます。硬さ記号はそれぞれHDA、HDD、HDEと表記します。また、ショア硬さと呼ばれる こともあるため反発タイプのショア硬さ試験機と混同しないように気を付けて下さい。
デュ ロメーターとよく似た測定方法ですが、熱硬化樹脂の硬化度合いの確認やFRP、アルミなどの軟金属にも用います。適用する機種によって形式A(機 種:GYZJ934-1)と形式B(機種:GYZJ935)があり、それぞれ硬さ記号をHBI-A、HBI-Bと表記します。
三角錐型のダイヤモンド圧子を用いて、目的の加重に負荷したときの試験荷重と圧子の押し込み深さから硬さを算出します。測定領域が狭く、試験荷重も小さいため、試験対象としては薄膜材料や表面から数μmの表層の評価に使用します。
以上、硬さ試験は試験方法および測定物の種類によって、単純には比較できませんので、そのことを理解した上で適切な機器を使用してください。
また、JIS規格以外にも硬さ試験の方法はありますので、不明な点はお問い合わせください。